Who are You?〜素知らぬ顔したキュートな殺人犯、中丸雄一さんがつくる『楽しい時間』ポスター考察〜
貴方はPOPな殺人現場を見たことがあるでしょうか。
POPでトリッキーでシニカルでシュールでキュートでグロテスク、立ち込める死の匂いを打ち消すように、眩い青が光る殺人現場。ドラマや小説や映画の中の話ではありません。
これはある1人のアイドルの、何人たりとも、誰にも掴むことの出来ない、彼の頭の中のお話。
2019年2月19日の大阪サンケイホールブリーゼを皮切りに、中丸雄一くんのソロアクトライブ『中丸君の楽しい時間3』が1年半ぶり、23日間延べ全35公演で幕を開けます。
12/28はそのメインビジュアルとなるポスター画像の解禁日だったのですが、わたしのなかのサブカルチャー少女が黙ってないビジュアルで涙が止まらなかったので、彼の海溝のように深い思考を考察したく、急いで筆を取った次第です。のべつまくなしにばーーっと書きます、ご了承ください。
考察の前に、とりあえずこれを見て欲しい。
Concert・Stage(KAT-TUN) | Johnny's net
(>>ポスター画像はコチラ をクリックしてください)
こ~~~れはやばい。ダリとマグリット好きのわたし、滾りすぎて身体の芯が燃える。
何故、中丸雄一さんはいつもわたし達の枠を超えた考えを提示してくれるのか。彼が誰よりも分かっているはずの中丸雄一という『自分』を、ほんとうはすべて忘れてしまっているのかもしれない、そんな錯覚。流石はメタの最高峰大天才中丸雄一さん…。何度観ても新たな感動と気付きを与えてくれるポスター。ほんとにわたし達はなかまるくんの掌の上で転がされてるんだなと改めて実感させられ、また堕ちていくのだ………………………。Marionation………。
前置きが死ぬほど長くなってしまいましたごめんなさい。
それでは楽しい時間ポスター考察、始まるよ〜〜〜!!!!
自分自身の死体を抱き上げこちらの様子を伺っている
ポスター画像をご覧になられた皆様ならもうお気づきでしょうがこのポスター、白いシャツを着た「中丸雄一」が既に息絶え死んでいる『中丸雄一』自身を抱き上げ、こちらの様子を伺っています。
"死んでいる"ほうの青いパジャマを着た『中丸雄一』は、首が後ろに倒れ、真っ直ぐに伸びている足が裸足であること、手の指が開いていることから、息絶えてから時間が経っている=死後硬直している状態だと思われます。そしてこの死体には影が付いているので、これは嘘(虚像)では無く、この死体が実際に存在している事の証明となります。
その死体を抱き上げ、こちらの様子を伺う白いシャツのもうひとりの「中丸雄一」の瞳には、光が宿っていないように見えます。"彼"に魂は宿っているのでしょうか。一見、白いシャツを着たほうが"生きて"おり、青いパジャマを着て瞳を閉じているほうが"死んで"いるとみなしますが、果たしてそれは真実なのか。わたし達がいま見ているこの光景は幻か現実か。そんな哲学的な問ですら持ってしまう、2人の『中丸雄一』。我が我を殺す倫理と秩序が崩れた世界の中で、猟奇的でくらくらと目眩がするほど刺激的な景色が、『楽しい時間』では繰り広げられるのかもしれない。そんな期待を持ちながらこのポスターを眺めています。
眩いくらいに記憶に残る"青色"
わたしはこのポスターを初見で見たとき、青色がとても効果的に使われているな、という感覚を持ちました。そこで、iphoneの明るさを最大にし、10秒間このポスターを瞬きせずに見つめたあと目を閉じ、青が瞳を閉じても残像として焼き付くのか実験してみました。その結果、ポスターの青色はしっかりとわたしの瞼に残像として焼き付き、浴室のタイルの線までもくっきりと浮かび上がってきたのです。
しかもこの青、"死"の中丸雄一が着ているパジャマのストライプ柄や2人の中丸雄一の影、シャワーの影などが綺麗に映えるほど綺麗に輝いており、ピカピカに磨かれている印象を受けます。この青の名前は『露草色』と言い、鮮やかな青を表しているようです。
『露草色』について、すこし調べてみました。
露草色(つゆくさいろ)とは、早朝に咲く露草 つゆくさの花にちなんだ明るい薄青色のことです。露草はツユクサ科の一年草で、日本各地の路傍や小川のほとりに群生しています。花や葉の汁を布に摺りつけて染めたことから、古名を『着き草』と呼ばれ、『月草』『鴨頭草』とも書かれました。万葉の時代には摺染(すりぞめ)に。また簡単に脱色できる特性から、現在でも友禅や紋染の下絵作業に用いられています。ちなみに、色が落ちやすい特性から、露草は「うつろう」「消える」などに掛かる枕詞 (まくらことば)となりました。
平安時代の襲の色目としては、「表・縹、裏・薄縹」で秋に着用された色目です。
"『うつろう』『消える』などにかかる枕詞となりました。"
なんだかとても、『楽しい時間』の作品を取り巻く世界観のすべて、彼が創り出す夢のすべてのことを語っているように見えて来て、鳥肌が立ちました。いくつも細かく張り巡らされ隠された伏線がこの作品の大きな魅力でもありますが、作品の鍵をひとつずつ『楽しい時間』のある世界に落として焦らすこの時間さえ、彼はニヤリと笑いながら楽しんで、わたし達の手の届かない高いところから深みに嵌る様子を見守り、気づいたときには私はもう彼の頭の中に既に迷い込んでいるのかも、とハッとしました。
また、調べてゆくうち、青と死の結び付きが強いことを示す文献もありました。
他の民族では、藍で青く染めることが行われ、青ないし緑は神秘さや異世界の色を表しもした。中東やエジプトでは魔除けの色であり、また死者を守る葬儀や死と結びついた色でもあった。
バビロンのイシュタル門は青い彩釉煉瓦で彩られ、インドのカーリダーサはシヴァ神の肌の色を青と表した。『旧約聖書』では翻訳による色彩用語の変遷が大きいものの、神の足元もしくは玉座には青いサファイアがあった。
この事実を知りながら、彼がこの青で緻密に世界を描いていようとしているのなら、わたしはほんとうに彼に頭が上がりません。もう、幕開けのその瞬間から泣いてしまう。
『何かが確実におかしい』"狙った"違和感
今回の『楽しい時間』のポスターは、誰もが一目見ただけで、『あれ?これ、何かが確実におかしいな』と人々に思わせる"狙った"違和感があると、わたしは思います。
これは、わたしが死ぬほど大好きで人格形成に強く影響を受けた画家、『ルネ・マグリット』に通ずるものが。なかまるくん、きっとマグリット好きだろうなあ…と今回めちゃくちゃめちゃくちゃ強く思ったので、一度頭の中をガッツリ覗かせて頂きたい。(動機が不純)
『ルネ・マグリット』、名前はあまり聞いた事なくとも、作品は誰もが一度は見た事があるはず。
ほらほらこういうの!美術の教科書とかで見たことありませんか?2枚目に掲載したのは『恋人たち』という作品で、わたしがマグリットの作品の中で、いちばん好きなもの。マグリット展で販売されてた『恋人たち』のグッズ、死ぬほど欲しかったな……。
マグリットはその世界観ゆえにシュルレアリスムの巨匠と呼ばれているのですが、『自分らしさ』とか『個性』からいちばん遠い存在だとおもいます。とても冷静な感覚の持ち主なのです。
そもそもシュルレアリスムとは?と疑問に思われる方も多いと思いますので、軽く説明させてください。
シュルレアリスムとは
芸術の形態、主張の一つ。絵画においては、無意識の世界を表現するもの、ありえない組み合わせで不条理な世界を表現するものなどを主にさす。日本語では"超現実主義"と呼ばれる。
わたし達は日常的によく『シュールな世界』という表現をしていますが、彼の絵はまさにそのど真ん中です。中丸担には100000000%刺さると思う。わたしが保証します。
既成概念をすべてぶっ壊し、心の奥底にしまっておいた感情がいっぺんに溢れてしまうような、思わず『これはなんだろう?』『どんな意味なのだろう?』『このふたりはだれなんだろう?』そう問いかけたくなる作品が、マグリットには非常に多いです。その点において、なかまるくんの『楽しい時間』に通ずる点が非常に多くあると、わたしは思っています。
中丸雄一さんはまさに、現代に降りたマグリットだと、わたしは声を大にして皆様にお伝えしたいのです。
『楽しい時間』の材料って何だろう?
見るものに奇妙な不思議さと困惑を与え、謎の渦に人々を引き込む。そこにあるのは不思議な美と、静かな驚異、ほんの少し辛口なスパイスと、とびきりキュートでPOPなエッセンス。
これが『楽しい時間』シリーズの材料であると、わたしは思っています。3作目となる今回は、いつもの様に飄々と素知らぬ顔でわたし達を引っ掻き回す殺人犯となるであろう中丸雄一さん。
もっともっと彼のことを、今作ですきになりたい。
そしてわたしはこの作品の幕が降りたとき、こう口にしてしまうと確信しています。