醒めない夢を見ていた

ただ、いとしいとつたえるだけ。

東京、それはさようならのうみのファンタジー。-『中丸君の楽しい時間3』を観て-

東京には、ファンタジーのフィルターがかかっている。たとえば、なんだか魔法的であるとか、眠らない街であるとか、夢がたくさん詰まっているとか、この街にいると寂しさなど消えてしまうとか、どこか繋がっていて霊性のある都市だとか、雑誌などでそのファンタジーを表現する言葉は星の数ほどあれど、わたしはこれを書いているいまも、じょうずな表現方法が見つからず、絶えず流線のように煌めき、拍動を続ける心臓のように点滅する東京のネオンライトを背に、空の上を飛んでいる。現在時刻は3/18 18:57。まるでシャンパングラスに注がれたひとくち分のシャンパンが身体に入り込み、急に視界が揺れ、淡い光のなかすきなひとに抱きとめられたその刹那、世界に煌めくシャンパンゴールドに永遠の約束を託すように、わたしはどうしようもなく、笑ってしまうほど、東京という街がすきである。

 


わたしがこんなにも東京に焦がれて永遠を見る理由。それは、わたしのだいすきなだいすきななかまるくんと同じ景色を瞳に映して、同じ空を見ていて、この街になかまるくんが生きている、という決して揺らぐことの、消えることの無い"ほんとうのはなし"を、3公演観劇させていただいた『中丸君の楽しい時間3』を通してこの目で確かに観たからだ。

 

 

 

 

 

 

もう二度と同じものは描けず、カタチには残せないのはわかっているから、このきもちを忘れないように、わたしはいま、この瞬間に感じているすべてを、ここに書き記そうとおもう。

 

 

 

 


春の気配が芽吹く東京で、わたしが観たなかまるくんは、3公演ともすべて、とても楽しそうで、きらきらとかがやいていた。"ひとり舞台をこの先もずっとライフワークにしたい"、"自身の名前の隣にこの舞台の名前を並べたとき、世界の誰もが『あー、あれね!楽しいよね、おもしろいよね!』と頷く、そんなものにしたい"みたいな気合を、信念を感じた。

「楽しい時間3」のコンセプトとして彼は『自分が楽しいとおもったもの、驚いたもの、普段と角度を変えて見てみると、面白いなとおもうもの、で構成してみた』とカーテンコールでもじもじしながらいつものように下を向いて話していた。(なお、正確には床を見ながら話すのではなく、床面に設置してある"鏡に映る自分自身"を見ながら話していた。自分のすがたを見てると安心するのかな、死ぬほどかわいくて保護欲100000倍になった 舞台がんばったゆっちくんにうまい棒とミルクレープあげたい…えらい、ほんとにえらいよきみは…)   そのカーテンコールの言葉を聞く度、3度ともものすごく泣きたくなってしまった。せかいでいちばんの、ありったけの愛を、尊敬を、拍手を、称賛を、楽しかったよ!という表情を、ずっとしあわせでいてね!というきもちを、日々ひとりで戦う彼に、たくさんたくさん花束に、シャワーにして身体中に、こころに、たくさん降らしてあげたいとおもった。わたしができることは、きっとそのくらいしかないからだ。わたし達が同じ時間を共にできる奇跡は、言葉を、表情を感じられる奇跡は、一筋の流れ星を見るより、時計が刻むゾロ目の瞬間を見るより、1億円の宝くじが当たるより、もっとずっと尊くて、街で一瞬すれ違うよりももっと濃密で、どうしようもなく抱きしめたくて、愛しくて、もっとずっと、大切なのだ。

舞台のコンセプトの言葉のあと、『舞台はいかがだったでしょうか』と反応を伺う場面があるのだが、わたしはいつも腕が折れそうなほど夢中で拍手をした。いまにも泣きそうな表情で。すると彼はいつも嬉しそうに、照れくさそうに、口角をあげて『ありがとうございます』と呟くのだ。(わたしにとって2公演目だった日は、いつまでもいつまでも拍手が鳴り止まず、それを止めようとしたなかまるくんが衣装のジャケットを半分脱いで拍手を止めさせようとするものだから、会場は歓声と熱狂の渦。更に拍手はヒートアップ、最終的にうれしくってめちゃくちゃめちゃくちゃ照れたなかまるくんがだいすきな『いいとも締め』で拍手を止める、というひと幕もあった。おもいっきり照れちゃってこのやろう~~~~!!!!おうちに連れ帰って抱きしめちゃうぞ♡♡♡)  この会場にいる誰もがそうであるように、みんななかまるくんのことがすきで、なかまるくんのことを信じ切っていて、彼もそれにちゃーーんと気づいていること。お客さんがブラッシュアップにすぐさま気付き、感嘆の声を上げること。この演者側と観劇する側、双方の心に、会場いっぱいに流れるあたたかな空気感を、わたしは宝箱に閉じ込めて持ち帰りたくなった。なかまるくんがずっとずっと飾らずに生きていられる理由は、きっとここにあるのかも、とさえおもった。

 

 

そして、今回の舞台のいちばんの目玉であろうブラホック外し、通称『B-1グランプリ』。それはわたしにとって、ただただすきが降り積もるだけの時間だった。3/16の夜公演で、これまで超えることの出来なかった60個のブラホックを外す、という大台に乗り、なかまるくんは新たな世界への鍵を手に入れることとなる。会場のあちこちから漏れ聞こえる『ヒェ…』『アァ…』といううめき声。そこでわたしはあらためて気づかされた。わたし達が受けた教育、それは、"中丸担、いざなかまるくんを目の前に劇薬的な事案が起ころうと起こらまいと、呼吸の仕方さえ難しく感じる、だったなあ…"と。

この日だけではなく入ったすべての公演で、ブラに手をかける、というよりも、ブラに目線を落とすだけで外れていたブラホック。会場のカウントダウンの数字が小さくなるにつれ会場の温度が10度くらいあがっていた。あの日、3/16の夜。歴史的瞬間をわたしはこの目で見た。

60の壁を破り新世界へ飛び出したなかまるくんの一部始終がこちら。

スタートの61個目のブラホックに手をかけたところで鳴るフィニッシュのゴング、からの喜びのガッツポーズ。会場はこの日いちばんの盛り上がりを見せ、割れんばかりの拍手で英雄を迎え、讃える。彼はヒーローインタビューでこう答えていた。『えー、個人的な目標である60の壁を超えました。見直す点も見つかりました。えー、これを改善すれば61、62、いや、63もいけると思います。ありがとうございました。』そう言い切って手を小さく振りながら去っていく英雄。ほんとにほんとにすきだとおもった。

会場のお客さんとなかまるくんが唯一直接繋がれる質問コーナー『ナカマルカラコミット』のあるお客さんに対する呼びかけ。これがわたしにとって最大の恋だった。

3/17昼公演の回。当たった15歳の女の子に、彼は、"26番ちゃん"とあだ名を付けたのだ。ただの席番号に"ちゃん"付しただけなのだけれど、わたしは目の前で観たとてつもなく美しいその光景を、永遠に忘れたくないとおもった。"26番ちゃん"と彼女のことを呼んだあの一瞬だけは、どんなに周りから歓声があがっても、甘やかな雰囲気に会場が包まれても、世界はなかまるくんと彼女のふたりぼっちのような、そんな気がした。通じあっている。繋がっている。きもちが互いに向いている、と。『どうしてそんなにかわいいんですか』と質問したあの15歳の女の子の声色から感じる尊敬と震える胸の高鳴り、緊張と勇気と、ほんのすこしだけ滲む初恋の薫りは紛れもなく、なかまるくんの持つ素敵な素敵な魔法だ。質問の時間のあいだ中、そっとそのひとだけを包むやさしくて甘い風。表現がうまく形容できなくてもどかしくて、『あーっと』『えーっと』『なんだっけな』と言葉を手繰り寄せるその様も、どうしたって素敵なのだ。困ってしまうくらいに。舞台を観終わったあの子のこころにも、そんなきもちが芽生えているのかな、とふとおもい、おもわず頬が緩んでしまった。

 

最後の最後のダンスシーン。宇宙服を着て、レーザーと光球を華麗にあやなしながら、まるでなにかをぶつけるように、重力が内に向きながらわたしのほんの5m先の通路で踊るなかまるくんを観たとき、わたしは身体から芯が抜け、視界が一気に揺れたのを感じた。いつか書いた『踊りで切る風も細く狭い躰に擦れる布も、すべて彼の一部になって、芸術にしてしまうところがすき』なそのきもちの質量が、またむくむくと膨れ上がって重さを増してゆくのが、ゆっくりとわかった。『ああいま、わたし、ひとのかたち、してないだろうな』ふわふわとした意識のなか、そう悟り、『中丸雄一』の深淵へと旅立った。

たったひとりで光球とともに、意識をどこか遠くへ向けながら小さなステージの上でただ舞うだけ。その顔は恍惚にも、陶酔にも似ていた。でもある瞬間に、『中丸雄一』の世界から光が消え、彼のなかの奥の奥に眠るどろりとしたものが見え隠れした気がした。でもそれは直ぐに、わたしの前から姿を消してしまった。それもすべて彼の手の内だとしたら。演出だったら。この楽しい時間すべて嘘だったら。そうおもっただけで、またひとつ、彼のことがすきになり、分からなくなった。感じれば感じるほど距離は近く、温度は高く、そして、またひとつ、遠ざかり、冷たさを持つようになっていた。

 

 

意識がはっきりとしたとき、胸のなかに残る『なにかを失った感覚』が心地よかった。

 

『現実と非現実。フィクションとノンフィクション。その境目が分からなくなって、なんだかふわふわした感覚になってくれれば』

 

カーテンコールで何度も何度も繰り返されたその言葉が、劇場を出てからも頭のなかにこびり付いて離れなかった。

 

 

なかまるくんの言葉のすべてを思い出しては噛み締めて、反芻しては飲み込んで、愛とやさしさと引力とたくさんの祝福に満ち満ちた90分の永遠の場面ひとつひとつを、わたしは宝箱にそっとしまって鍵をかけた。嬉しくてたのしくてだいすきで、ふわふわと地面が揺れているように見えて、じぶんの身体とこころがどこか離れてしまったような、そんな不思議な感覚を抱えながら歩く東京の街。じぶんが思い描いていたよりもっと、東京は素敵なところだと確信した。だって、だってそれは、なかまるくんが生きる街だからだ。なかまるくんがこの世に生まれて、物心ついて、青春を築いた街だから。だだのひとりの赤羽の男の子が、アイドルになると、決めてくれた街だから。KAT-TUNという居場所を、見つけてくれた街だから。誰かに恋した街だから。変わりゆく街の高いビルもいつまでも消えることの無いネオンも、それには到底勝てないのだ。

そんな素敵なこの街を、わたしは歩いている。同じ空を見て、同じ香りをおもって、同じ風を身体に受けている。『いつか』のときに恋焦がれ、きみがすきだ、のきもちを重ねたかもしれない景色を、時間を超えて見ている。『素敵だな』と感じたかもしれないものに、心動かされている。そんなちいさなことがとってもとってもうれしくて、わたしは何度か泣いた。この舞台で出逢ってくれたすべてのひとや、見知らぬすれ違うひとに、このことを伝えたくなった。大声で叫びたかった。わたしは彼がすきだ。中丸雄一というひとが、名前の通り雄でいちばんのひとが、とっても素敵な素敵なこのひとが、どうしたってすきなの。真昼の綺麗な青のなかで、たくさんの色かたち、こころや愛が集まる街の真ん中、誰にも気づかれないようにそっと泣いていた。わたしはそれを、秘密にしようとおもった。『あのね、あのね、わたしね、なかまるくんがね、だいすきなの。これはないしょの、あのねのおはなしなんだけど。なかまるくんがね、だいすきなのよ。』と。こころのなかに閉まったはずの宝箱を、さまざまな色の渦まく雑踏のなかに溶かして、流してしまった。永遠に取り出せないように。誰にも見られないように。ぐちゃぐちゃの絵の具のなかへ。甘美な夢は、もうここでおしまい。すべてさよならだ。そう言い聞かせて、わたしは空港へ足を踏み入れた。

 

 

現在の時刻、3/18 20:08。わたしはさようならのうみをおもっている。"すきだ"を溶かして流した遥か遠く、東京という街の、いまをおもっている。

カラスは夢の守り神なんだよ、というひとがいる。もしそれがほんとうなら、わたしはこう願う。

『なかまるくんを一生すきでいさせてほしい』

 

 

 

 

終わることの無いこの感情を、永遠に紡がれることの無いこの恋心を、ずっとずっと育てていたいとおもう。ばかだなあ、と笑われたっていい。現実を見なよ、と諭されたっていい。この声が枯れるまで、このファンタジーのフィルターが解けるまで、わたしは永遠になかまるくんに恋をしていられるのだ。骨抜きになってすきだと零して、しあわせを願って、わたし自身もぜったい絶対しあわせになって、おおきくなって、縮まることの無い距離の追いかけっこを、していたいのだ。愛おしさも苦しさも眩しさも、ぜんぶぜんぶ抱きしめさせて欲しい。

なかまるくん、わたしはあなたがこんなにもすきで、こまってしまうなあ。

またひとつ、すきが積もった。