白い薔薇の蕾と取り留めのない手紙のこと -なかまるくん36回目の誕生日によせて-
"すき"という気持ちは、数式のようだとおもう。
夜空に光る星のように無数に存在する素数を探すように。
いつからか決められた公式で図形の面積を求めるように。
"何故"を辿ると必ず答えの出てくる、決まり切った気持ちのように感じることがある。
いろんな気持ちが頭のなかをぐるぐる廻って、朝も昼も夜も、何度も何度も考え抜いて。
ようやく"答え"に辿り着いたその先には、自分なりの"すき"の公式が出来ていたりする。誰にも解けない、自分と誰かだけの公式が。
"すき"の気持ちはむずかしい。
たったひとこと"すき!"と叫べば済むはずなのに、ちっとも済んではくれない"すき!"という感情を、因数分解でもしたみたいに、気付けば何処までも何処までも綴っている。ごはんを食べることも、寝ることも忘れて。かたちを掴めないなにかに浮かされたみたいに。甘い媚薬を飲んだかのように。"すき"は、ほんとうに厄介ものだ。悔しいほどに、何もかも棄てたくなる。そんなこと、いけないって分かっているけれど。存在が遠いものではなく、近くにあって、肌感覚で自分に語りかける。その肌触りを確かめるように焦がれるうち、いつしか自分だけのものになっているような心地よさに惹かれるのかもしれない。理解されるような欲望なんてこの世にはないし、すきの前では理性など、ただの飾りだ。
わたしがなかまるくんに向ける"すき"のそれは、長い長い手紙のようだとおもっている。この手紙がいつ終わりを迎えるかは、わたしには分からない。分かりたくもない。取り留めもなく溢れてくる"すき"の答えは未だ見つからないけれど。それでいい。それがいい。とんでもないひとをすきになってしまったなと、いまでも時たま考えて笑ってしまったりもする。7歳のときのわたしの審美眼、間違えてなかったよ。
わたしがひとつ歳を重ねて、身長が伸びて、季節の匂いが変わっても。なかまるくんとの距離は少し近づいて、ゆっくり影が伸びるくらいの速度で、遠くなってゆく。見ている景色は流れ星よりも絵の具を溶かした空よりも、空に透かすときらきら光る飴玉よりも鮮やかに、一瞬だけ強く強く瞬いて、またすぐピントが合わなくなって。"わたしとあなたの永遠"として固定することは出来なくなってしまう。わたしがあなたへ叫んだ"好き"は1秒後には過去になり、ゆっくり弧を描いて冷たい刹那へ消える。とてもさみしくて、いとしくて、大好きで、泣きたくなるほど心地よい。この感情に、なんと名前を付けよう。恋と呼ぶにはあまりに幼く脆く、愛と呼ぶには軽すぎる。
星の透き間を縫うように繊細で、ピンと空気が張り詰めて、この世の輝きをすべて宝箱に詰め込んだようなダンスがすきだ。
その長くて甘く艶やかな躰躯から奏でられる、風を切る音がすきだ。
心からの幸せの、たのしいの、ありがとうの、うれしいのしるしの、目尻に深く刻まれる皺がすきだ。
心から安心したときにけらけらと高く響く、悪戯っ子みたいな乾いた笑い声がすきだ。
どんなにPOPでキュートでアバンギャルドな衣装も、シンプルなスーツもスウェットも簡単に着こなして、手の内にしてしまうところがすきだ。
爽やかで好青年でかっこいいお兄さんの奥底に、チラリと見え隠れするけっこうやんちゃでシニカルな男の子の輪郭が、残像がすきだ。
気持ちがちょっと高ぶると、言葉の端々が乱暴になってしまうところがすきだ。
生きるうえでのルールが多すぎて、自分のなかの芯が確立されすぎて、ほんの少し、面倒くさいところがすきだ。
サッカーの話がだいすきなところがすきだ。
いつも理性の鎧を纏っているところがすきだ。
理性の鎧を、アイドルのお仕事では少し脱いでくれるところがすきだ。
自分自身の気持ちを、被った理性の鎧の中身を、頭の中で想い描く"これから"と"これまで"のすべてを、決しておおっぴらにしないところがすきだ。
仲の良い友達とのエピソードを、自慢げに話さないところがすきだ。
出逢った仲間を、ずっとずっと大切にするところがすきだ。
ファンの気持ちを、メンバーの気持ちを、すーっと見透かすように掬うところがすきだ。
言いたい言葉のその先を、想う気持ちのその先を、直ぐに汲み取って、ちゃんと伝えやすいようにパスを繋げるところがすきだ。
目に見えない優しさで、そっと背中を押すところがすきだ。
みんなの頼れるお兄ちゃんなところがすきだ。
どうしようもなく自分が苦しいとき、辛いとき、悔しいとき、少し伏し目がちになってしまうところが、気持ちを隠そうと、揺れてしまうところが、哀しくて、辛い。もう、頑張らなくていい。でも、それでも、"ほんとう"は見せないところがすきだ。
ほんとうにすきですきで、困ってしまう。
すきがからだと心を支配して、さみしささえ抱く。
なかまるくんのことが、なかまるくんを構成する要素のすべてがすきだ。
あなたが魅せるすべての幻を、眩いくらい刺すリアルを、心からいわいたい。
あなたに抱く尊敬も、恋心も、まっさらな"いとおしい"も。狂わされてしまいたいも、堕ちてゆきたいも、爽やかに薫る死の匂いも、或いは、ほんの少しのこわさだって。感じたぜんぶの大切な感情は、すべて秘密にしておきたい。余計なものはいらない。誰の言葉も欲しくない。なんにもいらない。ただゆっくり、確かめるように、なぞるように、噛み締めるように、この名前のない感情と向き合いたくなる。きみがすきだと叫び崩れ落ちて暮れてゆく心は果物みたいに熟れて、冷えていくほどに甘く、儚い。夜が作る幻みたいな日々のなかで、世界に溶けてゆく時間の静けさが唯一ひとをまともに見せるなら、夕日の時間がずっとずっと続いてほしい。きみの命も、永遠であってほしい。次の瞬きできみが消えてしまうかもしれないこわさを呑み込みながらそう願う。叶わないと分かっているけれど、あなたには永遠でいてほしいのだ。このしあわせの終わりなんて見たくない。こわくなるくらいの幸福を、からだとこころいっぱいに受け止めて欲しい。甘い夢だけ見ていて欲しい。KAT-TUNは永遠なのですから、と小さく笑ったあの日のきみが、このきもちに重なる。
なかまるくん、36歳のお誕生日、
おめでとうございます。
今日も明日も明後日も、その先もどうか。
きみと、きみの愛するものすべてが
きみと、きみの愛するものの未来が
いつだって、なんだって、
素晴らしくありますよう。